研究概要

 環境問題や化石燃料枯渇問題への意識の高まりから,再生可能エネルギー(以下,再エネ)の電力システムへの導入が進んでいます。しかし,太陽光発電や風力発電などの再エネは,出力が天候に応じて変動するだけでなく,外乱に対する応答特性が火力・原子力・水力発電と大きく異なります。そのため,電力システムの解析・運用・制御における新たな課題が生じています。

 当研究室では,再エネの主力電源化と電力の安定供給の両立を目指して,主に電力系統の解析・運用・制御手法に関する研究に取り組んでいます。

広域制御技術を用いた過渡安定性の安定化制御手法の開発

テーマ1

 将来,再エネの導入に伴い送電網の潮流状態が時々刻々と変化する状況では,系統事故時の同期発電機群の安定性(過渡安定性)の維持が現在よりも難しくなることが予想されます。そこで本研究では,GPSを用いた広域地点間の計測技術,光通信・5G等を用いた高速情報通信技術,高速演算技術といった新技術を応用した系統安定化システムの新たな構想および理論の開発に取り組んでいます。


コンバータを用いた周波数・電圧安定性の安定化制御手法の開発

テーマ2

 コンバータを介して電力系統に連系される再エネ電源の導入が進むと,同期発電機の並列台数減少によって,電源脱落時のRoCoF(Rate of Change of Frequency)の悪化や,地絡事故時の電圧低下幅の増加が懸念されます。そこで本研究では,電力系統の周波数安定性や電圧安定性の維持・向上を目的として,蓄電池や再エネの連系用コンバータの制御手法の高度化や,同期調相機との安定化効果の比較といった検討課題に取り組んでいます。


再エネの予測外れに対処可能な電力系統の運用計画手法の開発

テーマ3

 再エネの予測外れによって,送電線の熱容量や安定性といった送電系統で生じる系統制約に抵触する機会が増えると予想されます。そこで本研究では,実運用断面の前日〜数時間前の時点で,発電設備・蓄電池・FACTS機器等の系統制御機器の運用計画を最適化することにより,系統制約向け調整力を確保し,再エネの予測外れに起因する停電を防ぐ手法の開発に取り組んでいます。